蒼い栞

過ぎ去ったすべてと僕の愛する人生に捧ぐ

真理

それは今は知らなくてもいい

知る術すらないという

 

禅問答のような

美しい四色定理のような

完全なるエスペラントのような

昨夜みた夢のような

 

そうして人々は還っていく

思いもしないことを思いしるために

精一杯生き抜いた人への褒美かもしれない

 

深宇宙の座標軸から

最期に至る真理のこと

 

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音のない幻想曲

秋の夜の幻想の中に触れてみる

あの三日月はあたたかな記憶

 

それは熱量

それは奔流

それは歴史

それは研ぎすまされた空気の結晶か

 

同じような明日はいらない

擦り切れた言葉もいらない

 

眼を

本を

思考を

すべてを閉じよう

静寂を一分の友としよう

そうして

残ったものが詩なのだろう

 

短い言葉

静寂へ語る言葉

なんて素晴らしい響き

浮き上がるような気持ち

間違えそうな鼓動

 

秋の夜の静寂の中の私の詩

 

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呼吸法

生ぬるい対流のすき間から

眼を閉じて感じる一つの風

僕はそれを鼻の奥から吸い込む

深く

深く

 

肺胞の一つ一つの膨らみを感じながら

全身を透き通る液体が駆け巡るのを知る

 

空気の流れは止まり

満ち満ちた安堵に似た感情が湧く

 

 

しばらくして

自身の一部を内面から引き剥がす

 

温かな僕の心は

幾重にも分かれた気管支を辿り

四方を集めて逆流する

それはゆっくりと風船が萎むよう

 

すぼめた口で織り成す吐息は

すべての思いを捨てるべく

唇から世界へと溢れでる

 

その普段通りの所作の中に

ただ生きているという所作の中に

大切な何かが隠されているような

そんな気がするのです

 

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夜に生きる

いつからだろう

夜の匂いが好きになったのは

 

排気ガスでけぶった月も

闇に溶けていく人の行方も

淀んだ風を切り裂くビームも

 

仲間と語り合った手探りな日々も

 

ゆったりとした時の流れを

愛しく想う

 

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花は生きている

花は生きている

散るまでだろうか

花は生きている

枯れ果てるまでだろうか

 

花は泣き濡れて

土にまみれ

あるいは水底へと溺れる

堆積し

あるいは沈殿し

養分となり

あるいは燃料となる

 

それでも

花は生きている

すべての生命の中で

 

美しかったその色を

密やかに纏わせて

 

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