2016-11-29 真理 詩(30〜35) それは今は知らなくてもいい 知る術すらないという 禅問答のような 美しい四色定理のような 完全なるエスペラントのような 昨夜みた夢のような そうして人々は還っていく 思いもしないことを思いしるために 精一杯生き抜いた人への褒美かもしれない 深宇宙の座標軸から 最期に至る真理のこと
2016-11-21 音のない幻想曲 詩(30〜35) 秋の夜の幻想の中に触れてみる あの三日月はあたたかな記憶 それは熱量 それは奔流 それは歴史 それは研ぎすまされた空気の結晶か 同じような明日はいらない 擦り切れた言葉もいらない 眼を 本を 思考を すべてを閉じよう 静寂を一分の友としよう そうして 残ったものが詩なのだろう 短い言葉 静寂へ語る言葉 なんて素晴らしい響き 浮き上がるような気持ち 間違えそうな鼓動 秋の夜の静寂の中の私の詩
2016-11-05 呼吸法 詩(25〜30) 生ぬるい対流のすき間から 眼を閉じて感じる一つの風 僕はそれを鼻の奥から吸い込む 深く 深く 肺胞の一つ一つの膨らみを感じながら 全身を透き通る液体が駆け巡るのを知る 空気の流れは止まり 満ち満ちた安堵に似た感情が湧く しばらくして 自身の一部を内面から引き剥がす 温かな僕の心は 幾重にも分かれた気管支を辿り 四方を集めて逆流する それはゆっくりと風船が萎むよう すぼめた口で織り成す吐息は すべての思いを捨てるべく 唇から世界へと溢れでる その普段通りの所作の中に ただ生きているという所作の中に 大切な何かが隠されているような そんな気がするのです
2016-10-30 夜に生きる 詩(25〜30) いつからだろう 夜の匂いが好きになったのは 排気ガスでけぶった月も 闇に溶けていく人の行方も 淀んだ風を切り裂くビームも 仲間と語り合った手探りな日々も ゆったりとした時の流れを 愛しく想う
2016-10-30 花は生きている 詩(30〜35) 花は生きている 散るまでだろうか 花は生きている 枯れ果てるまでだろうか 花は泣き濡れて 土にまみれ あるいは水底へと溺れる 堆積し あるいは沈殿し 養分となり あるいは燃料となる それでも 花は生きている すべての生命の中で 美しかったその色を 密やかに纏わせて