2016-11-05 呼吸法 詩(25〜30) 生ぬるい対流のすき間から 眼を閉じて感じる一つの風 僕はそれを鼻の奥から吸い込む 深く 深く 肺胞の一つ一つの膨らみを感じながら 全身を透き通る液体が駆け巡るのを知る 空気の流れは止まり 満ち満ちた安堵に似た感情が湧く しばらくして 自身の一部を内面から引き剥がす 温かな僕の心は 幾重にも分かれた気管支を辿り 四方を集めて逆流する それはゆっくりと風船が萎むよう すぼめた口で織り成す吐息は すべての思いを捨てるべく 唇から世界へと溢れでる その普段通りの所作の中に ただ生きているという所作の中に 大切な何かが隠されているような そんな気がするのです