蒼い栞

過ぎ去ったすべてと僕の愛する人生に捧ぐ

青い窓

 

 

雨の色が透明になるこの街で

小さな家が建っていた

 

涼しげな白い壁と

素朴な木のテーブル

青い窓はいつも開いている

 

中にいるのは優しげな少女

これからテーブルクロスを敷いて

花瓶を飾るのだろう

 

海を渡る風が通る

カーテンが柔らかく揺れている

余計なものなど何もない

 

 

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ああ

なぜか涙が出そうだ

もう夢でしか描けない夏の日

 

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芽吹き

重い空に滲む風景
通りを行く人の動きは鈍い
 
どこに向かっているというのか
先は見えない
 
こんな閉塞感はなぜだろうか
今ここにいること
それを思い知らせてくれているのだろう?
 
今まで生かされてきたのは
自分の意志ですべてを決めるためじゃない
 
根拠はないけれど
草の芽が上に上に伸びるように
きっと あるべき方向に向かっている
 
だって そうだろう?
僕たちは生きていかなければならないのだから
 
雨に暮れる街のかたすみで
 

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こころ

 

いま大波が打ち寄せる

こころの岸辺
 
思い知るのは
外からは見えないから
 
通りを行き交う人の心のさざ波は
外からは見えないのだけれど
人はそれぞれこころに起伏を持って往来している
 
それでも
近くの人だけでも
こころのさざ波を思いやれたらいい
神経質になるのではなく
私のこころを水面を鏡のように滑らかにしておく
いろいろな人の波紋を感じ取れるように
 
それは
つまり
自分の体を通してすべてに耳を澄ますということ
あなたの宇宙を共有できる感じ
わかってもらえなくても
理解できなくても
あなたのこころのさざ波も大波も私のこころに投影する
共感にならなくても
勘違いかもしれなくても
 
私はこころの深いところに
それを沈める
 
あなたの横顔とともに
 

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水槽

透き通る鼓動

ただまっすぐな想いに打たれて

打ち寄せる切なさを感じていた

こんなに穏やかな時があったなんで

 

春の夜の底を歩く

一つ一つを愛せるかな

忘れた想いを混ぜたような

優しい風が胸を溶かす

 

春の夜の底を歩く

見上げた月は暖かかった

重ねた想いが充ちた匂い

遠くの光が滲んだから

 

そっと過ぎる今のなかで

ぼくは君を愛するだろう

 

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