蒼い栞

過ぎ去ったすべてと僕の愛する人生に捧ぐ

2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

夜に生きる

いつからだろう 夜の匂いが好きになったのは 排気ガスでけぶった月も 闇に溶けていく人の行方も 淀んだ風を切り裂くビームも 仲間と語り合った手探りな日々も ゆったりとした時の流れを 愛しく想う

花は生きている

花は生きている 散るまでだろうか 花は生きている 枯れ果てるまでだろうか 花は泣き濡れて 土にまみれ あるいは水底へと溺れる 堆積し あるいは沈殿し 養分となり あるいは燃料となる それでも 花は生きている すべての生命の中で 美しかったその色を 密やか…

もう一つのメルヘン

太陽と月の狭間 透明な夕焼けのぬくもりと 凜とした金星のきらめき これが見たかったのさ 昼と夜の狭間 そんなメルヘン

可能性

素晴らしい詩人になったかもしれない サラリーマンもいる プロ野球選手になったかもしれない トラックの運転手もいる 歴史的な政治家になったかもしれない 大人になれなかった赤子もいる 世界を変えるかもしれない これからの君がいる 巡り合わせか時代のう…

答え

そこに答えはない あるとすれば、 それは 君の後ろ姿

ノスタルジア

キンモクセイの夜 胸を抜ける粒子が 何度でも僕を少年に戻す からっぽの心を残して 煌めくときを溶かして 朧月の下で詩う

冬が来るたび

冬が来るたび 散っていく葉のように 取り戻すことのできない諸々を 地面を向いて嘆くのではなく それらが自分を育てる糧となるよう 根を伸ばし 幹を重ね 枝を広げ また 新しい可能性が芽吹くのです

決意

今、新たな志を擁いた君に届くようにと 蒼天の花びらにのせて散らした想いは 履きつぶしてきた靴の数々を埋め尽くした 涙で満たした小さな躰を水面に漂わせて ゆれる瞳に燃える剣先を映し出した 遠くその声は鈍色の心に鳴り響いて 響きは爪先から宇宙の果て…

シラコバトの雛たち

だれ一人 いない保育所 凪いで夏

変わる

当たり前が当たり前でなくなったとき それは大切に変わる それは静かに大きな力に変わる

大言壮語

我々は思い知る 引き裂かれる想いを 投げ打ってきた時間を 揺さ振られるなら本望 真実など とうに無い

一つの秋

恋しくもなる 優しくもなる それも 秋 みえないものを 一つだけ 信じていこうと 胸に決めた

ファビアンへの追憶

名前もない日々でさえ 失くすことだけ考えた 夜間飛行の彼方まで 伸ばした手の彼方まで パタゴニア機の無線は呼ぶ つたない希望も添えてなお 失くすことだけ考えた その心は遠雷に似ている

懐古

幼いころのことを思い出すと こう胸の奥がキュンとする 嬉しいからでも 悲しいからでもない どんなに手を伸ばしても届くことのない あのころが眩しくて苦しいだけなんだ だけど 僕はあのころを思い出す 忘れるということは とてもとても悲しいことだと思うか…

星空の下で 遥か彼方の激動を想う ベッドの中で あの娘の幸せな未来を想う 果てしない流れから切り取られた瞬間に 確かに自分はここに在る 悠久のほとりからは一瞬の光 きっと宇宙より広大な心をみつける 切なくも愛おしい心をみつめる

手紙

大地を踏みしめ 海を聴き 風をかいで 夢を見て 君を想う

鈍色

約束は遠い日の手のひら 知りたかったのはあたたかい涙の理由 不自由な体を残して 心は前へ 動く 翔る ただ一つの鎖につながれて