蒼い栞

過ぎ去ったすべてと僕の愛する人生に捧ぐ

2017-01-01から1年間の記事一覧

青い窓

雨の色が透明になるこの街で 小さな家が建っていた 涼しげな白い壁と 素朴な木のテーブル 青い窓はいつも開いている 中にいるのは優しげな少女 これからテーブルクロスを敷いて 花瓶を飾るのだろう 海を渡る風が通る カーテンが柔らかく揺れている 余計なも…

救世主

夏の夜も 冬の朝も 救世主は夢をみない 彼はただ あるべき姿を知る

芽吹き

重い空に滲む風景 通りを行く人の動きは鈍い どこに向かっているというのか 先は見えない こんな閉塞感はなぜだろうか 今ここにいること それを思い知らせてくれているのだろう? 今まで生かされてきたのは 自分の意志ですべてを決めるためじゃない 根拠はな…

こころ

いま大波が打ち寄せる こころの岸辺 思い知るのは 外からは見えないから 通りを行き交う人の心のさざ波は 外からは見えないのだけれど 人はそれぞれこころに起伏を持って往来している それでも 近くの人だけでも こころのさざ波を思いやれたらいい 神経質に…

水槽

透き通る鼓動 ただまっすぐな想いに打たれて 打ち寄せる切なさを感じていた こんなに穏やかな時があったなんで 春の夜の底を歩く 一つ一つを愛せるかな 忘れた想いを混ぜたような 優しい風が胸を溶かす 春の夜の底を歩く 見上げた月は暖かかった 重ねた想い…

濡れた涙

愛に憧れた 君に出会った今は こぼれ落ちそうな夜に走ってゆくよ 不機嫌な君の髪が流れて 涙はずっと…

病院

病院の白さは なぜあんなに際立つのか 揺るがないものと 定まらないものと 希望と絶望と 渦まく箱の中 コントラストの境界線を僕は知らない

甘いカスタードクリームを 気の抜けたジンジャーエールを 現実に迎合する大人を 一瞥するように旅に出よう 向かうは南西 僕の心は色のない……のように 夕暮れの地で君を射つ

残響がこの身を砕いて 後悔が記憶を染めて 真実が存在を忘却する ならば 果たして 残るものは この詩か骨か